
風清揚は、愛する妻・尤雪と穏やかな一生を送るはずだった。だがある日、地下室で赤い光を脈打つ巨大な“肉の蚌”を目にしてしまう。 いくら洗っても落ちない、妻の体に残るぬめり。古い書物に記された「蚌女は精を吸い、珠を育てる」という伝承――それらが重なり、彼は疑い始める。優しく寄り添うこの女は、満月の夜に人の精気を喰らう血の蚌ではないのか、と。 やがて彼は、荒野の奥に佇む古びた屋敷へと足を踏み入れる。歳を取らぬ一族、夜ごと夢遊のように池へと沈む妻、水底の母蚌に浮かぶ人の手と白骨――重なり合う異様な光景が、彼を逃げ場のない迷宮へと追い込んでいく。 満月の夜が近づく。血真珠は、ついに完成の時を迎えようとしていた。 これは愛か、それとも狩りか。 枕元にいるその存在は、共に生きる妻なのか――それとも、収穫の時を待つ妖なのか。